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院長 山本従道からの病気のお話



多危険因子症候群について

前々回は、肥満と肥満症の定義についての話をしました。
そのときに、内臓脂肪肥満のことを少しだけ説明しました。

●内臓脂肪肥満●
@腹部CT検査で内臓脂肪面積;100cu以上
Aウエスト周囲径;女性90cm 男性85cm以上

肥満学会の提唱は、肥満で健康障害を持つ方、
あるいは肥満で内臓脂肪肥満のある方を肥満症とし
診断して治療しましょうという考え方です。
そこで今回は、動脈硬化症に進行しやすい状態:多危険因子症候群についての話です。

動脈硬化に進みやすい危険因子には、色々なものがありますが、
主なものは、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、高尿酸血症などです。
これらの根底にあるものが、肥満で特に内臓脂肪の蓄積は、
インスリン抵抗性という状態と結びついて動脈硬化を進めると考えられています。

インスリン抵抗性というのは、お腹の脂肪が多すぎて、
インスリンという糖代謝のホルモンが効きにくくなることで(インスリン抵抗性)、
中性脂肪の増加や耐糖能障害を生み、血圧上昇、血糖上昇を引き起こしてくるわけです。

このように病気の根底はインスリンの抵抗性で、その表現のされかたが、
ある人は高血圧であり、ある人は高脂血症であり、ある人は肥満症であると考えられます。
ちょうど、海の上に浮かぶ氷山のようなもので、目に見えるところに現れているのは、
各々の山ですが、見えないところでは全部つながって一つの病態であるということです。

そして、重症な方は、このような表に出てくる山がたくさんあって、病気が重なってきますが、
例えば軽い糖尿病の方が運動不足の状態が続き、体重も増え血圧も上がってきたとか、
肥満の度合いが進んで糖尿病や中性脂肪の増加や善玉のコレステロールの低下が指摘されたなど。
このような方では、喫煙や運動不足や過食などで氷山の全体が大きくなるということになります。
そしてある日急に心筋梗塞になります。

この状態を、マルチリスクファクター症候群(multi─risk─factor─syndrome)
【=多危険因子症候群】と呼ぶわけです。
欧米人に比べて日本人では、肥満の程度が軽くても動脈硬化が起こりやすいことから、
研究が進み、大阪大学の松沢教授が内臓肥満症候群という症候群を提唱されました。
その後も、外国で同じような病態が報告され、現在以下の表のような症候群が命名されています。
DeadlyQuartetというのは、死の四重奏と訳されています。
これらはいずれも生活習慣病のかたまりみたいなものです。

内臓脂肪症候群 SyndromeX Deadly Quartet インスリン抵抗性症候群
松沢:1987年 Reaven:1988年 Kaplan:1989年 DeFronzo:1991年
                  
内臓脂肪蓄積     上半身肥満 肥満
耐糖能障害 耐糖能障害 耐糖能障害 糖尿病
高血圧 高血圧 高血圧 高血圧
高TG血症 高VLDL血症 高TG血症 脂質代謝異常
低HDL血症 低HDL血症    
    高インスリン血症     高インスリン血症
    インスリン抵抗性    
            動脈硬化性脳疾患


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