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院長 山本従道からの病気のお話



貧血について

血液の検査で、最も一般的な検査が貧血の検査です。

@血液の中の赤血球の数
Aその中に含まれる血の色素の量
B赤血球の容積を測定します。
それぞれ、その結果は、赤血球、血色素(ヘモグロビン)、ヘマトクリットとして表示されます。

正常値は、性差があって以下の通りです。

◆赤 血 球
  男400─550万/mm3
  女350─500万/mm3
◆ヘモグロビン
  男13.0─17.0g/d1
  女11.0─15.0g/d1
◆ヘマトクリット
  男40─50%
  女35─45%

貧血になりますといろいろな症状をきたします。
赤血球の役割が肺で酸素を得て、それを組織に運ぶという運搬役ですから、
貧血になりますと運び屋がいなくなるわけです。
体全体のだるさ、疲れやすさなどから始まり、脳の低酸素状態としてめまい、
頭痛、耳鳴りなどが出ます。
息切れや動悸といった心肺系の症状も伴いやすく、急速に進めば失神、
意識障害で倒れることもあります。

貧血の原因としては、大きく分けて

T 血球の産生の低下
U 破壊の亢進
V 失血

があります。

T 血球を造る場所である骨髄の機能の低下で起こる貧血は、
  頻度は少ないですが、重症な病気が多いです。
  代表的な疾患は、再生不良性貧血(難病に指定されています)骨髄線維症、
  MDS(骨髄異型性症候群)、骨髄性白血病など。

症候性貧血では、腎性貧血なども産生低下に分けられます。

U 赤血球は酸素運搬という役割を持って生体の中で活動している細胞ですが、
  その細胞が壊されると短い寿命となって貧血状態となります。
  免疫の仕組みで赤血球が溶かされていく溶血性貧血や遺伝性球状赤血球症、
  発作性夜間ヘモグロビン尿症など珍しい疾患はたくさんあります。

V 貧血の一番多い原因は、血が失われることで起こる貧血です。
  失血といいますが、体の外に出て目に見える出血と体の中に出ていて目に見えないものを
  含めて失血を総称しています。
  口から肛門までの間の消化管からの出血が一番多く、
  女性では生理の出血が多いことによる貧血が一番多い病態です。
  いずれも、鉄欠乏性貧血の状態となります。

検査結果は、上記のものをさらに計算して赤血球1個あたりの容積や
色素の量を出すことができます。
赤血球が小さく、色が薄いこと(小球性低色素性貧血)などが分かり、
このことから鉄欠乏性貧血であると診断できることになります。
本当に鉄分が足らないかどうかは、血清鉄や総鉄結合能(鉄と結合できる蛋白質の総和)や
フェリチンなどを調べないと診断できません。
鉄欠乏性であれば、鉄分を補えばよいわけで治療は比較的やさしいですが、
鉄不足になる原因が大切です。
胃潰瘍や大腸疾患があるのに関わらず、造血剤だけの治療では、
その病気が進行してしまいますし、
貧血もなかなかよくなりません。
消化管疾患かどうかの判断は、便の中の潜血反応を調べます。
最近の検査はヒトのヘモグロビンが便の中に出ているかを調べますので、
昔のように肉や魚を食べたから疑陽性に出ることはなくなっています。
消化管出血のほかの原因としては、生理関連のものが多く、
女性の一般的貧血は殆どがこの形です。
その場合は、その方の年齢と婦人的な状態も診て治療方針が決められますが、
しばらく鉄剤などで様子を見ることが多いです。

他の疾患は、巨赤芽球性貧血といって、
ビタミン不足や胃の切除術後の貧血が頻度の多いものでしょう。
このときには、ビタミンB12や葉酸というビタミンを補ったりして治療します。
腎性貧血では、腎臓が骨髄を刺激するエリスロポエチンという
ホルモンを作れないために進む貧血ですが、
医学の進歩によりこのエリスロポエチンという物質を注射して治療することが出来ます。

症候性貧血と呼ばれるものには、腎性貧血のほか肝硬変で脾臓の機能亢進で出現する貧血や、
甲状腺機能低下症などでの貧血もあります。
原疾患の治療が大切ですが、病状が進めば治療困難なものも多いです。
貧血検査は、一般の健診でも、献血時でも、人間ドックなどはもちろん、最低限の検査ですので、
どこでも出来るものです。

気になる方は、クリニックアルペンローゼにお越しください。


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