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院長 山本従道からの病気のお話



動悸について

動悸がするという症状は、よく診られるものです。
その意味するものは人によって異なり、大きく分けて3種類あります。

@心臓の鼓動が早い。(心拍数が実際に多い)
A心臓の拍動が乱れる。(脈の不整がある、不整 脈である)
B心臓の鼓動を強く自覚する。 (頻脈も不整もない)

  @の場合は、その動悸(頻脈)が、急に起こって同じ程度で続き急に治るもの(発作性)と、
徐々に脈拍が増えその程度も強弱変化があり、自然に治るものとがあります。

前者は、発作性の頻脈性の不整脈で、脈が規則的であれば
発作性上室性頻拍症などの心臓固有の不整脈の病気が考えられます。
この場合は体が必要としていない脈の増加で、この状態が続くと心臓自体が弱ってきます。
従って点滴など行い薬を使ってその頻脈発作を止める必要があります。

発作性の頻拍性の不整脈で、脈が不規則的なものもよく見かけられます。
多くは、発作性の心房細動という不整脈です。
加齢とともに心機能が落ちたり、心臓が弱った方では、慢性の心房細動という状態を
みかけることは少なくありません。
この場合は、ほとんど脈の速さや不整感の自覚を伴わないため、
動悸として訴えられることは少ないようです。
基本的には、放置してよい良性の病態です。

しかし、発作性の心房細動で頻拍型のものは、まずそれ自体で心不全を起こすことがあること、
不快な自覚症状を伴うことなどから治療の対象です。
薬の点滴、注射で速効的に治す方法や内服で徐々に治まらせる方法もあります。
ひどい場合には、カウンターショックといって
電気的に細動を除く(除細動といいます)方法もあります。
発作性の心房細動の最大の問題点は、心臓の中に血栓ができやすく、
それが脳に飛ぶと塞栓といって、脳梗塞を引き起こす可能性があることです。
この場合は、血液の固まりを抑制する薬や血小板機能を落とす薬を併用することが
大切になります。

徐々に脈が増えるものでは、生理的な変化によるものが多いです。
脈拍は、脳や筋肉などの臓器や組織で必要とされる酸素やブドウ糖を運ぶための
血液量を決める大きな要素です。(心拍出量は一回拍出量と心拍数の積で決定されます。)
従って、生理的に運動、発熱、疼痛、興奮などで脈拍の増加が見られます。

また、運搬体である血液が薄い状態(貧血)や
酸素を与える機能が低下している状態(呼吸不全)でも、
脈拍は増えてきます。
さらに、全身の細胞の活動度を決定する甲状腺ホルモンの量によっても
脈拍が増えてくる場合があります。(甲状腺機能亢進症)

これらは、症候性頻脈(二次性頻脈) といわれ、
心臓以外の病気に引き続いて起こる脈の増加です。
引き続いて起こる脈の増加です。
また薬剤の影響もありますので、診察の時に詳細な病歴の聴取が必要となるわけです。
さらに血圧の変化でも、白衣高血圧という状態がありますが、
白衣の方に診察されている時だけ緊張から血圧が上昇するものですが、
この時には脈拍の増加を伴っているものが殆どです。
トキメキタイプと私が呼んでいる状態ですが、
交感神経の緊張によるものです。
トキメク想いがあることは人間的だと思いますが、よく話を聞くと、
小さい頃に小児科で注射を受けて怖い思いをしたという外傷体験の方も多いようです。
広義の心的外傷後ストレス障害(PTSD)になりますか・・・。

Aの場合、脈が飛ぶという言葉で表現される不整脈の場合が多いです。
多くは、期外収縮と言って正規にうつ心拍の間に早めに心臓が収縮することによって起こります。
上室性(心房性)期外収縮と心室性期外収縮 とに大別されますが、
前者は殆ど良性で放置可能です。
疲れやカフェインなどでこの不整脈が出る体質の方 もおられます。
期外収縮が続けて起こらなければ心配いりません。
後者(心室性)は、その不整脈がどのような形のものであるかが大切になります。
要注意不整脈としてまとめられているような、多発性、連発性、多源性、
連結期の短いものなどないかどうか、普通の心電図をとり、
さらに24時間心電図を取って確認しておくことが必要です。
このような動悸の中のごく一部に、心臓麻痺で急死する不整脈が含まれています。

Bの場合、話はいろいろ複雑になります。
脈も速くなく、不整もないが本人は、胸が苦しい感じがして動悸がすると訴える。
内科医の腕の見せ所と思いますが、まずは他の疾患がないかどうかです。
呼吸器が悪くないか?食堂、大動脈疾患は?など鑑別疾患はいろいろあります。

よく使う言葉に、胸騒ぎという言葉があります。
悪い予感といった感じですが、精神的なのものです。
このように臨床的に一番多いのは、不安関連の症状です。

よくあるケースは中年の独居の未亡人、夜間、家の周りの物音に心細くなり胸が苦しくなる。
軽い不整脈がある方で以前医者が心電図を見て首を傾けていた記憶だけが残り
心臓に自信が持てない人、夜間死にそうな心臓発作をおこし、
救急車で病院に着くとサッと治ってしまう。

以前は、心臓神経症などと 呼ばれていたこれらの状態は、最近は、
恐慌性障害 (パニック障害)とか全般性不安障害などと呼ばれています。
心療内科的治療が必要な状態ですが、一般内科での日常診療でよく診られるものです。
人間とは、いろいろ奥深いものです。
さてあなたの動悸は?



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