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院長 山本従道からの病気のお話



発熱について

発熱も日常的によく見る症候の一つです。
熱が出るということは、体温が平常より高い状態にあることを示しています。
ヒトが生きていくには、細胞が活動していくことが必要で、
より良い活動のために、その時々の状態に対応して温度も上下する必要が出てきます。
これを体温調節といいます。

例えば、冬の寒い時にブルブル震えたりしますが、
これは筋肉が小刻みに収縮して熱を産生し体温を上げるためです。
また夏の暑いときに汗が出るのは、水分の蒸発で気化熱を奪って体温を下げるためです。
さらに病気の場合では、例えば風邪を引いて熱が出ますが、
これは体に入った病原体の繁殖を妨げるための体の反応で目的をもったものです。

また、ホルモンによる影響もいろいろ見られます。
女性の基礎体温に示されるように、生理の周期による変動もあります。
甲状腺ホルモンも体の細胞の活動度を決めるものですから、
基礎代謝の変動から体温の上下が起こります。
このように、体温は目的をもって高度な調節を受けています。

さて、発熱という現象はこの規序が不快感を感じるほど乱れたものであるともいえます。
発熱のパターンから、稽留熱、弛張熱、間歇熱など熱型を示す言葉があります。
また、熱の程度から、微熱(37.5%まで)という状態もあります。
さらに、原因のわかった発熱(症候性の発熱)と原因不明な発熱(不明熱)とに分けて
考える事もあります。

症候性の発熱の原因は、ほとんどが急性の感染症です。
カゼ、扁桃腺炎、肺炎、膵臓炎、大腸炎、腎盂炎、髄膜炎、皮膚の感染性疾患など
たくさんの病気があります。
細菌感染が主ですが、他にウイルスなどもあります。
感染症以外では、環境因子が大切です。
熱中症などの疾患、アレルギー性疾患や貧血でも発熱することがあります。
臨床的に問題となるのは、不明熱の場合です。
その時点で診断のついていない病態があるわけですから、
原因を突き止めることが大切になります。
不明熱の場合も、一番多いのは、感染症です。

細菌感染の場合は白血球が上昇し、感染部位の症状が伴えば診断は比較的容易ですが、
ウィルス感染の場合は白血球は上昇せず、他の検査でも異常所見のない場合は
診断がつき難いことも多いものです。
解熱と共に、典型的な発疹が出て診断がつく、
小児の突発性発疹などの病気も熱だけの時期には診断がつかないものです。
ツツガムシ病というダニの一種に媒介されるリケッチャア感染症も
特有の出し口が見つからないと診断がつきにくい高熱性の急性疾患の一つです。
慢性に微熱が続く状態のあと、肺結核の診断がつくことも時に見られます。
診断がつきにくい慢性の感染症には、結核のほかに、副鼻腔炎、慢性の扁桃腺炎、
大腸の憩室炎など様々な病態と感染症があります。

不明熱の2番目の原因としては、膠原病があげられます。
若い女性に多いSLE(全身性エリテマ)や多発性筋炎、強皮症、多発性動脈炎、
混合性結合組織病など全身の臓器や結合組織に炎症を起こす難病もあります。

不明熱の3番目に重要なものは、悪性腫瘍です。
熱が続き体重が減りだんだん弱ってくる時に、
体のどこかに癌が出来ている可能性があり注意が必要です。

他の発熱の原因としては、薬によるものがあります。
薬剤アレルギーで特定の薬に対するその人の体質的反応で起こる発熱で、
発疹や肝機能障害を伴うこともあります。
薬の種類によっては、悪性過高熱という重症な病態を起こす薬もあります。
麻酔剤や抗精神病剤が多いのですが、
その発症には遺伝的体質が関与するといわれています。
明らかな病気がなく、ストレスだけでも体温が上昇することがあります。
ストレス性高体温症といいますが、心療内科などの外来で時にみられます。
このように発熱は、いろいろな原因でおこり、ごく軽症から重症疾患まで、
よくある病態からまれな疾患まで様々なものと関連しています。

健康管理の上では、大切な生体徴候(vital sign)の一つです。
対応についてですが、発熱を過剰に心配して、すぐに解熱剤を使うのは考えものです。
まず、発熱を起こした病気の診断が確定しません。
(根本的治療が必要な病気が隠れているかもしれません。)
また、熱があることがその時の体に必要な場合もあります。
(ウィルスの繁殖防止の目的をもった生体反応の場合など)
次に解熱剤の副作用(胃腸障害、脳症の発症、腎障害)の危険性があります。
熱が出たら、まず、医療機関を受診をすることをお勧めします。

気になることがありましたら、
お気軽にクリニック・アルペンローゼへお越しください。



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