排便は、一日一回の形のある便(有形便)の排泄が普通です。
2〜3日に1回でも、定期的であれば個人差の範囲で便秘とはいいません。
便秘とは、数日以上も排便がなくかつ排便間隔が不規則になったもので、
この場合便は水分含量が少なくなり固くなるのが普通です。
多少とも腹部膨満感、不快感、下腹部痛を伴うことが多く、
時に頭痛、めまいなどを伴うこともあります。
便秘の後、下痢を見ることがありますが、これは固い便の刺激による
粘膜の炎症や腸の運動の亢進のためであると考えられます。
臨床の現場では、便秘という訴えの意味するものが人によりまちまちで、
ちょっと出にくい程度から、便が固い、細い、排便時の苦痛、残便感など
様々なものを意味しています。 詳しく観察する必要があります。
病態生理的には、大腸の運動機能の減退、緊張の亢進、通過障害などの状態で
便の通過に時間がかかって起こります。
また、大腸周辺の炎症性疾患で反応的に便秘が起こることもあります。
生理的には、食事の内容の変化(繊維分の量、水分の量)や精神的影響も
便の固さに大いに関係があります。
一番多い便秘は、その人の生活習慣からくるもので、
習慣性(常習)便秘といわれほとんど病気ではありません。
その起こり方により、弛緩性と痙攣性とに分けられたりしています。
また病気に関連してくる便秘もありますので、
どのような疾患が考えられるかという鑑別診断が必要になってきます。
鑑別診断の考え方では、まず急性便秘か慢性便秘かが大切です。
また病気の起こり方(病因)から器質的と機能的とに分けられます。
便秘では、下痢と交代性に出てくるものか、便秘単独かも大切な要素の一つです。
主な疾患を挙げてみます。
● 慢性の便秘:
食習慣、生活習慣からの便秘 / 習慣性便秘
パーキンソン病、甲状腺機能低下症などの内科慢性疾患
に伴うもの / うつ病などの精神科疾患に伴う便秘 /
抗コリン作用を有する薬剤の影響による便秘 /
カルシウムの過剰や食物線維成分の不足による便秘
● 急性の便秘:
旅行中などの生活の変化や脱水など、精神的緊張など
腸閉塞などの腸管の急な閉塞による便秘
盲腸炎などの周辺臓器の炎症による反応性の機能低下による便秘
● 交代性便通異常(下痢と便秘繰り返す):
過敏性大腸症の症状としての便秘
その病気の原因により、画像診断などで異常の見つかる器質的異常と
動きの問題である機能的異常とに分類することも出来ます。
● 機能的異常:多くは良性
腸管の自律神経系の機能変動によるもの /
薬剤の影響や過敏性大腸症など
● 器質的異常:
大腸癌(便に血液が潜んでいないかをみることが必要)/
腸閉塞 / 腸の癒着症
この様に便秘といってもさまざまなことを考えなければなりません。
従って、便秘を治すのにも、その病態にあった治療を選ぶ必要があります。
多くは、慢性の機能的便秘ですから、食生活の改善や、下剤の使用で
よくすることが出来ます。
病気によっては、早期の発見と特別な治療を必要とするものもあります。
また、下剤や腸管運動促進の薬の種類も
・浣腸
・坐薬
・前日飲む下剤(眠前1回)
・腸管の動きを改善したり水分の量を整える緩下剤(食後に3回飲む)
・腸の運動機能を高める内服薬
・腸管の運動を高める薬(点滴で行う)
などがあります。
便秘でお困りの方、ご相談ください。
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