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院長 山本従道からの病気のお話



食欲不振について

食欲というものは、空腹感と密接な関係にありますが、
他のさまざまな要素を含んでより複合的なものです。
味覚、嗅覚、視覚、歯の調子などのほかの器官の調子、
それから過去の食事の記憶などの精神的要素もたぶんに含んだ多角的なものです。
空腹感というのは、どちらかというと不愉快なものであるのに対して、
食欲というのは楽しい感情を含んだものだともいえます。
満腹になっても、ケーキは別バラという女性も多いようですが、
おいしいものを食べたいという感情は、更に進んでグルメという言葉でも表されます。

あまり豊かでない時代には、空腹感を満たすことが精一杯であった訳ですが、
時代が進んでいつでも何でも豊富に手に入る時代になり(飽食の時代ともいわれます)、
ヒトの感情の表現としての食行動という現象が見られる時代にもなりました。
ヒトの精神の状態が食事をとるという行為に反映されているというわけです。

最も病的なのは、神経性食思不振症という心療内科、婦人科、精神科などにまたがる病気です。
若い女性に多いのですが、母親との葛藤や大人になることへの拒絶の感情を
食べないという行動で表現し、思春期痩せ症とも言われます。

また、時にはむさぼり食べ、そのあと指を入れて嘔吐してまた食べるなどのような
異常な食行動(貪食症)を伴うものも多く、
体重が30kgを切るようになると、死に至ることもある難しい病気です。
内科医としては、関わりあいたくない病気の一つです。

このような極端な例ではなく、悲しいことやショックを受ける出来事があると
食欲がなくなることは、日常的に良く経験することです。
このように、心と食との関連(心食相関)をしめす例はたくさんあります。
恋焦がれて身が細るとか・・・、心配で食事も喉をとおらないとか・・・、
好きなことに没頭して寝食を忘れるとか・・・、淋しい女は肥るとか・・・、などなど。

心身医学的には、代理摂食と言う言葉で表現しますが、
ストレスの状況下に置かれた場合に、過食になってしまうことが多いようです。
現代人の肥満の成因に自動車の普及などによる運動不足と共に
ストレスの多い環境も関係があるといわれています。
もちろんヒトの行動様式としては、落ち込んで食べられなくなる人もいますので、
様々な変化があり面白いところです。

診療所などの一線診療で比較的多いのは、仮面うつ病といわれる状態です。
だるい、やる気がしない、眠れない、朝早く目覚めるなどの不定愁訴と共に食欲不振が現れます。
空腹感がない、何を食べてもおいしくない、味がないなどの訴えで、
さまざまなことに対する関心、感動、感謝の気持ちが低下します。
本人は、ウツという心理状態だと自覚しないで身体症状のみを訴えられ、
これを医学用語で仮面うつ病といいます。

逆に、ものごとへの関心が異常に高まり不安の強い状態が神経症です。
健康への気がかりが多すぎ、異常に検査データを気にしたり、
健康食品を過剰にとったりする状態は、健康へのトラワレと表現できますが、
従来のノイローゼという言葉であらわすとより解りやすいかもしれません。
このように、心の安定が快食の基本です。
健康日本21でもいわれていますように、家族団欒での楽しい食事が望まれるところです。
より華やかな食器を使ったり、食卓に花やキャンドルを置くなどの工夫をして、
しゃれた雰囲気を出せば食事もよりおいしくなるというものです。

以上述べてきたような心との関連による食欲の変動とは別に、
体調の変化による食欲不振も多いものです。
風邪を引いて熱が出ても、頭痛がひどくても人により食欲不振になります。
体調不良による食欲不振と分類できると思います。
身体的疾患としては、まず消化器系の病気が考えられます。
病気においては、随伴する症状が診断の一助となりますので、
食欲不振のほかの症状が大切です。
主なものを病気(随伴症状)で示してみます。

まず、食道炎(むねやけ)、胃炎(嘔吐や腹痛)、胃潰瘍や胃癌(吐血や血便)、
十二指腸潰瘍(空腹時の痛み)、腸炎(下痢や腹痛、肝炎(倦怠感や黄疸)、胆嚢炎、
膵臓炎(腹痛)など殆どの消化器疾患が食欲不振を呈します。
これらには、急性のものと慢性に続くものがあり、機能的で一過性のものと
癌などのように除々に確実に進行するものがあります。
病気のすべての診断に共通して言えることですが、経過が大切です。

循環器系疾患も食欲不振を起こします。
慢性の心不全など息切れ浮腫と共に全体の活動力が低下し、食欲も落ちます。
腎機能障害も尿毒症といわれる透析が必要な状態になるまででも食欲が落ちます。
呼吸器の疾患や内分泌の異常でも活動性の低下と共に食欲不振は出現します。
脳神経の病気やリュウマチなどの皮膚結合織疾患でも同様です。
治療中の方では、薬による胃の粘膜障害から(急性胃病変)食欲不振も多いものですので、
注意が必要です。

気になる方は、クリニック・アルペンローゼへご相談ください。


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