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院長 山本従道からの病気のお話



むくみについて

むくみというのは、腫れる状態のことですが、医学的には、浮腫といいます。
血管の外で、細胞のまわりの組織の水分(組織間液)が
異常に蓄積した状態のことです。

浮腫液の成分は、血漿の成分と似ていますが、蛋白の量などは浮腫の成因によって
異なるようです。
浮腫が起こる場所により、全身性の場合もあり、特定の部位や器官に限局するものもあります。

浮腫の起こる機序により、いろいろに分類されます。
主な因子としては、@末梢での血管の状態、A腎臓でのナトリウム、水分の移動の問題、
などがあげられますが、多くの因子絡み合った浮腫も多いようです。

@ の末梢血管では、
● 細小動脈の拡張や静脈圧の上昇で毛細管圧の上昇が引き起こされ、浮腫が発生します。
  この形の浮腫の最も多いものは、下に下げているところが腫れる下腿などの浮腫です。
  また血栓性静脈炎や他の静脈の圧迫性の病変でも起こります。
  上大静脈症候群では、腫瘍などによる上大静脈の圧迫で上半身のみの浮腫が起こります。
  心不全や肺水腫なども静脈圧の上昇からの浮腫につながります。

  毛細管の透過性亢進による浮腫もあります。
  火傷や外傷、毒素、アレルギーなどで局所の血管の周囲の限局した浮腫が起こるものです。
  クインク浮腫といわれるアレルギーで起こる特異的浮腫もあります。

● 血液の中の蛋白が低下して、血漿の膠質浸透圧が下がって水分が組織に移動する為の
  浮腫もあります。
  飢餓や、低栄養、ネフローゼ症候群のときに見られる浮腫はこの機序によります。

● 逆に組織の圧が低下することで、浮腫が発生すると考えられる場合もあります。
  老人に見られる浮腫でこの要素も多分に関与しています。

● リンパ管の閉塞によっても特有の浮腫を起こします。
  乳癌の術後やリンパ管炎、フィラリア症でみられる浮腫です。
  他の浮腫とは感じの違った、充実性の腫脹です。

A の腎臓関連のものでは、
● まず、塩分の過剰摂取があげられます。
  腎臓の働き以上の過剰な塩分が負荷されますと、正常な腎機能の人でも
  軽度の浮腫を生じるようです。
  塩分摂取を控えれば軽快します。

● 腎機能の低下があると、塩分、水分の排泄能力が減少して浮腫を生じます。

● このような腎臓の機能を調整している(アルドステロンという)ホルモンの変化での、
  浮腫が起こることもありますし、漢方薬に含まれる甘草という物質が
  偽アルドステロン症と言う浮腫と高血圧、低カリウム血症を引き起こすことは
  よく知られた事実です。

このように、浮腫の病態はいろいろありますが、特に多くの因子が関連する浮腫は、より複雑です。

◎ 肝硬変での浮腫は、肝臓が硬くなることによって、
  その中を通る門脈という静脈の圧が上昇します。(門脈圧亢進)
  また肝臓では、蛋白合成能が低下してアルブミンという血漿蛋白が低下し
  浸透圧の低下が起こります。

  このようにして、腹水が溜まるようになるとこれらによって下大静脈の圧迫が起こったり、
  腎血流の低下からアルドステロンを介した浮腫の促進も見られます。
  従って、一般の利尿剤のほかに抗アルドステロン性の利尿剤や
  血漿分画製剤が治療に使われたりします。

◎ うっ血性心不全の浮腫は、心不全により心拍出量が減少し
  体中の組織で血液の流れが低下することから始まり、その状態に体が対応して、
  循環血液量を増やすようホルモンや腎機能が変化して浮腫が増強します。
  静脈圧の上昇も浮腫につながり、
  殆どすべての要素が心不全のときの浮腫には関わっています。
  主な治療は、利尿剤から血管拡張剤などです。

◎ 腎性の浮腫は、腎臓からの蛋白の漏失(蛋白尿)で、
  低蛋白血症という血漿の浸透圧の低下で浮腫が起こります。
  また、腎炎などでは、腎機能の低下からの水、ナトリウムの貯留からの浮腫も起こります。

◎ 他に、内分泌性の浮腫として、甲状腺機能低下症があげられます。

◎ 原因不明の浮腫として、中年女性におこる、下腿の浮腫で何の病気のない
  特発性浮腫というものもあります。

このように、浮腫という症状は、さまざまな病態・疾患でおこります。
その中には、内科的に重要な疾患が隠されている場合があります。
注意が必要ですが、いたずらに気にして、ひどく悩むのも考え物です。
水は、低い所に流れます。水不足は、より深刻な脱水を起こします。

むくみが気になる方は、クリニック・アルペンローゼへご相談ください。


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