クリニックロゴ 〒731-0154
広島市安佐南区上安6-31-1
TEL:082-830-3350
FAX:082-830-3338
クリニックロゴ

院長 山本従道からの病気のお話



痰について

痰は、咳とともに呼吸器の疾患に関連して現れます。
上気道炎といわれる、いわゆる風邪でも、咽喉の痛みなどと一緒に咳、痰が出てきます。
したがって、一般健康人でも体験する出現頻度の高い症状のひとつといえます。

喀痰についての記載は、古代ギリシャの時代からいろいろあるようです。
ヒポクラテスは、痰を燃やしてみたり、水に浮かべてみたりして、
中に含まれる膿の成分の研究をしたと伝えられています。

医学が進歩して、胸部レントゲン写真やCT検査、
細菌学や細胞診などが診断に欠くことのできないものになって、
喀痰学という領域は注目されることが少なくなったようです。

臨床的に痰が出て来るのは、どのような疾患があるかが気になるところですが、
その前に、肺の仕組みを説明しておきます。

外から空気を吸い込んで肺で、酸素を血液の中に取り込み、
二酸化炭素を空気中に出すガス交換をしています(肺胞換気)。
外からの吸い込んだ空気が、薄い肺胞という膜を介して血液と接して
肺胞換気をおこなうわけで、肺胞にまで達する空気は適度な水分を持ち、
適当な温度になっていないといけません。
また、空気中にある埃などの異物が障害を起こさないように除外し、
溜まった異物は外に出す仕組みがなくては長く働き続けることが出来ません。
このため、口から肺胞までの空気の通り道(気道)では、
杯細胞などと呼ばれる分泌性の細胞があって粘液を産生分泌しています。
健康成人で一日約100mlの分泌物が産生され、気道にある繊毛によって
口の方向に運ばれ、声門まで達するのは1日約10mlといわれています。
ほとんどは、無意識のうちに飲み込んでしまい痰と自覚されるものは少ないようです。
このようにして適当な湿り気をもって、気道は正常に働き、
呼吸がうまくできているわけです。

この気道に、何らかの障害や炎症が起こりますと、気道の分泌物が増えて外に出やすいように
咳や痰となって現れてきます。あくまでも、目的をもった生体反応であるわけです。
気管支炎のときに咳止めを希望される方が多いのですが、
このような気道の自浄作用を妨げるように咳止めの薬を使いすぎると、
痰の排泄が十分できず、肺炎などになってしまうこともあり注意が必要です。

気道の分泌を増やす病態としては、まず感染があげられます。一番多いのは風邪です。
主にウィルスによって起こされる上気道の炎症反応です。

細菌で気管支や肺が炎症を起こせば、気管支炎、肺炎という病気になります。
肺と胸の間の膜(胸膜)が炎症を起こせば、胸膜炎(肋膜炎も同じ)という病名になります。
その菌が、特殊なものであれば、結核性肋膜炎などという病名がつくわけです。

吸い込んだ空気の中に含まれるものによっても、さまざまな病態が起こります。
アレルギーの反応をおこしやすい体質の人の場合には、その変化の部位によって、
花粉症、アレルギー性気管支炎、気管支喘息、農夫肺、過敏性肺臓炎などの
疾患となってあらわれます。

吸入した物質が有害なものであれば、体質にかかわらず殆どの人に障害を起こすことになります。
毒ガスなどは、大久野島の研究をあげるまでもなく、ひどい障害を起こすと想像できます。
炭鉱など粉塵を長期間にわたって吸い込むような職業では、
塵肺症という疾患にかかることも常識です。
また、近代社会では、喘息の原因として工場の噴煙や自動車の排気ガスが問題にされることも
よく耳にする事柄です。

そしてさらに身近には、煙草の煙も良くないものの一つで、
他人の吸った煙草の煙も吸いたくないものです。
以上のような外因性の因子ではなく、内的な肺の病気でも、
気道の分泌物が増えて痰が出てきます。
気管支拡張症は、慢性の咳、膿性の痰を特徴とする疾患ですが、比較的頻度の多いものです。
まれなものはいろいろありますが、肺胞蛋白症という肺胞にタンパクがたまってしまう病気も
咳とともに痰が多くなるものです。
間質性肺炎や肺線維症などといわれる肺が固くなってしまう病態もまれではなく、
息切れや咳が中心で時に痰を伴うものです。

このように痰はさまざまな病気に関連して出現しますが、
咳と息切れなど呼吸器の他の症状も診断の参考になります。
痰の色も、感染症では特有の膿のような色になりますし、菌の種類によっても違います。

慢性に続く疾患の場合は、透明なコップのようなものに、痰を取って、
1日の痰の量や色合いを記載していくことが、病状の進展の参考になるようです。
痰を取るときには、唾液と痰は違うものであることを理解して取ることが必要です。

鼻から降りてくる後ろの鼻だれ(後鼻漏)とも違うものですが、
蓄膿症などの慢性の耳鼻科疾患が汎細気管支炎と関連があるとか言われており、
一緒にとってもかまわない(共に何らかの感染を示す)と考えられます。

咳や痰の続く方、主治医にご相談ください。
そして煙草は止めましょう。
禁煙は、個人の問題ですが、分煙は権利の問題で、防煙は社会の問題です。



院長 山本従道からの病気のお話 メニューに戻る