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院長 山本従道からの病気のお話



腹痛について

皆さんこんにちは。アルペンローゼ院長の山本従道です。
今回は、腹痛についてです。

一般的によく経験する症状の一つに腹痛があります。
日常用語として、腹痛は理解しやすい言葉ですが、
医学用語としては、お腹全体の漠然とした痛みを腹痛と表現しています。
腹部の痛みには、他の名称もあります。
胃のあたりの痛みに限局したものは心窩部痛といい、肋骨弓部の下の痛みを季肋部痛といい、
他のものと区別をしています。
下腹部の痛みは特別な名称はなく、まとめて下腹部痛と呼んでいます。
このように腹痛については、部位別に考えてみると解りやすいようです。

また痛みの性状が大切です。
軽い不快感程度から鈍い痛みや激痛までさまざまです。
絶えがたい強烈な痛みのものは、急性腹症と呼ばれ、外科的治療の必要な場合が
少なくありません。
急性腹症では、対応がまずく手遅れになってしまうと命にかかわる病気が
いくつも含まれていますので、重症度を的確に判断することが求められます。

鑑別すべき主な疾患を挙げてみます。
まずは上腹部痛についてです。
心窩部痛季肋部痛などの症状では、胸部の疾患でも同じ症状で発症することがある事実を
知っておく必要があります。
心疾患では、急性で重症化しやすいものに心筋梗塞があります。
正しい診断と早急な治療が必要です。心膜炎という心臓のまわりの袋の炎症でも、
胸痛や上腹痛を起こします。
大動脈疾患では、胸部大動脈瘤の破裂や解離性大動脈瘤で
上腹部や背部の痛みと共に急変します。
肺疾患では、肺梗塞などにおいて呼吸困難と共に上腹部痛が現われます。

腹痛の中心は、やはり消化器疾患が多いわけですが、食道疾患では、逆流性食道炎などで、
胸焼け感から心窩部痛を起こします。
心窩部痛は一般の方は胃痛といわれますが、一番多いのは胃疾患でしょう。
頻度的には、急性胃炎が多く、短い期間で軽い胃薬などで治る状態です。
胃のただれがひどくなり、粘膜が削られた状態になると胃潰瘍といいます。
この場合は、長めに胃潰瘍の薬を飲む必要があります。
胃潰瘍は出血や穿孔を起こして重症化することもあり、また潰瘍を繰り返しながら、
一部に癌(早期ガン)が発生することもあり、胃カメラ検査が必要です。
また進行癌でも状態により心窩部痛を伴うこともあります。
胃の先の腸管を十二指腸といいますが、十二指腸潰瘍でも心窩部から右季肋部の痛みが
出現します。
胃潰瘍は食後の痛み、十二指腸潰瘍は空腹時の痛みが多いという現象もあるようです。

さらに膵臓疾患でも、病型によりさまざまな腹痛が起こります。

急性膵炎では、アミラーゼという脂肪分解酵素が膵臓から漏れ出して腸間膜の脂肪を分解して、
劇症膵炎という最重症の急性腹症を起こすことがあります。
命にかかわる病気です。
一般の急性膵炎も人が感じる激痛の中最大級のものだといわれています。
慢性の膵炎は、やや軽く、軽症です。
脂肪便などの消化分解障害や体重減少、糖尿病などが症状の中心となる状態のものもあります。
慢性膵炎の中で、腫瘤形成性膵炎という状態は、膵臓癌との鑑別が困難で
診断学的に手ごわい病態です。

左右の季肋部痛となると、一番多いのは胆嚢疾患でしょう。急性胆嚢炎、
胆石症
などで肝機能障害と共に黄疸が出たり、発熱、胆石発作など特有な症状で
病気が推測されます。
超音波検査で、胆嚢内に石を発見できれば診断がつくわけですが、
無症候性胆石といって、放置していても問題のない石も多く、総合的判断が求められます。
胆嚢にはポリープもよく見つかりますが、(胃の場合も同じく)
腹痛の原因となることは少ないようです。
右季肋部痛では、他には肝疾患の場合があります。
肝臓癌が大きくなった場合や肝膿瘍、胆管癌などで季肋部痛が起こる場合があります。

次に腹部全体から特に腹部中央の腹痛についてです。

腹部にも大血管があり、腹部大動脈瘤ができることもあります。
解離性は少なく、破裂は急死の原因になりますが慢性の痛みは少ないようです。
一番多いのは腸疾患で、急性腸炎でしょう。
食事やウィルス感染から腸の炎症を起こすものですが、下痢や発熱を伴い診断は容易です。
上腸間膜動脈の塞栓症は診断が困難で重症となりやすい急性腹症の一つです。手術が必要です。
腸捻転、腸閉塞、虫垂炎なども急性腹症で外科的治療が必要で重症化しやすい病気です。

診断が困難なものには、大腸憩室炎メッケル憩室炎などという病気もあります。
潰瘍性大腸炎クローン病など特有の下痢と腹痛を起こすものです。
以上のような様々な疾患に引き続いて腹膜の炎症が起これば、腹膜炎という状態になります。
盲腸などで手術をするかしないかの判断としてこの腹膜刺激症状の有無が
ポイントになることも少なくありません。

外傷後の脾臓の破裂(受傷後数時間してジワジワと進行してショックになる)も、
見落としてはならない重篤な疾患です。
腎泌尿器科疾患では、腎結石、尿管結石などが左右の腹部(やや横)の痛みを起こす疾患です。
血尿を伴うことが多く、診断は比較的容易です。

最後に下腹部痛についてです。

S字状結腸、直腸などの腸管と、膀胱、前立腺(男性のみ)などの泌尿器と卵巣、子宮などの
婦人科臓器があります。
これらの異常で下腹部痛は起こります。
一番多いのは、便秘でしょう。
注意すべき疾患は、卵巣の捻転子宮外妊娠の破裂などです。
他は急性腹症となる状態は少ないようです。

部位不定なものでは、帯状疱疹があげられます。
特有の水疱を持つ発疹が出現すれば診断が確定しますが、
それまでの2−3日診断がつき難いこともあります。
肋間神経痛なども同様ですが、他の重症な疾患でないことを除外し、
様子を観察するしかないことも時にあります。

このように腹痛は、様々な疾患と関連しています。
上に行くほど重要なものがあるともいえます。
痛いときに直ぐに薬ではなく、痛み止めは胃に悪いですし、
胃痛以外の原因も考慮して対応することが大切です。

腹痛は、放置せず、主治医にご相談ください。


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