クリニックロゴ 〒731-0154
広島市安佐南区上安6-31-1
TEL:082-830-3350
FAX:082-830-3338
クリニックロゴ

院長 山本従道からの病気のお話



口の渇きについて

皆さんこんにちは。アルペンローゼ院長の山本従道です。
今回は口の渇きについてお話します。

口の渇きというのは、様々な状態でおこるごくありふれたものです。
必ずしも病気ではなくて、体からの信号と考えたい症状です。

内科的にまとめますと、口の中は唾液腺から唾液(つば)が出て、
適度な湿り気をもつように調整されています。
唾液は、アミラーゼという消化酵素を含んで、炭水化物の分解や消化にかかわっています。

唾液の正常分泌量は、0.5−3.0リットルで、3.0リットル以上出るものを流涎症といい、
0・5リットル以下のものを唾液分泌減少症といいます。
唾液分泌減少は、精神的な興奮、発熱時、高度の嘔吐や下痢、糖尿病、腎不全、尿崩症、
シェグレン症候群、唾液腺切除術後にみられます。

もっと解りやすい家庭の医学という本をみますと、次のように記載されています。

精神的に緊張したとき、入れ歯をした後、高熱下痢の場合などのほか、全身的には糖尿病、
局所的には口内炎などある場合に口が渇きます。

夏の暑い日に運動したり、入浴の後汗をかくと、のどが渇くのは当然ですが、
特に汗をかかなくても、乾燥したところにいると、
知らず知らずに水分を取られてのどが渇きます。
これは健康な人でも当然起こる生理的現象で、水分を十分に取れば治ります。
また、非常に緊張したり興奮したときにも、のどが渇いて水をどんどん飲むことが
あります。
この場合は尿が多くなります。

鼻がつまって、口だけあけて呼吸しているとのどがからからに渇きます。
これはのどの粘膜だけが乾燥しているので、水を飲んでも、
すぐもとのように乾いてしまいます。
一方、塩辛い物をたくさん食べたり、酒類を飲みすぎると
血液を薄める必要から細胞の中の水分が血液に取られてのどが渇いたように感じます。

これらすべての現象は一時的なもので、一晩過ぎて原因がなくなれば
治ってしまうようなものです。
しかし、特に運動もしないのに一日に何リットルも水を飲んだり
毎晩のように夜中に水をのみに起きるような状態が起こる事があります。
これは異常で、一般には尿の量もふえていきますが、
尿崩症や糖尿病などがないかよく調べてもらう必要があります。
腎臓の病気でものどが渇くことがあります。

病気で熱の出ているときに、のどが渇くのは当然ですが、
高血圧や心臓病で利尿剤をたくさん飲んでいるために、のどが渇くことがあります。
薬を飲んでいてこのような場合にはよく主治医に相談して、
やたらに水を飲むような状態は避けるべきです。

特別な状態としては、シェグレン症候群という病気があります。
唾液腺、涙腺などの外分泌腺の分泌が減るために、
口腔の乾燥、のどの痛み、眼の乾きなどの症状が出てくるものです。
自己免疫疾患といって自分の体のなかの細胞に異常に免疫反応を起こして、
長時間にわたって徐々に進行します。
血液検査で自己抗体という異常な蛋白がでたり、炎症反応などが陽性になったりします。
耳鼻科で唾液腺のの造影検査を受けたり、
眼科で涙の流出検査(シルマーテスト)などで診断されます。
確定診断は、唾液腺の組織検査です。特別な治療はありません。
乾き目には、点眼薬、唾液の分泌低下には、人口唾液などが一般的治療です。

シェグレン症候群までの状態でなく、加齢とともに唾液腺の分泌量は減少して、
年齢とともに口の渇きの頻度は増えます。
また、年齢とともに口渇中枢の機能も低下して脱水の自覚も少なくなります。

一番注意しないといけないのは、薬剤の影響です。

唾液腺の分泌は、副交感神経に支配されていますので、
副交感神経を遮断するような作用をもつ薬では、口渇が起こることになります。
副交感神経は、アセチルコリンという神経伝達物質で神経の間の刺激が伝わるように
なっていますので、このアセチルコリンを阻害するような作用のある薬では、
副交感神経遮断効果が出現して口渇などを起こします。
このような作用を抗コリン作用といいます。
一番典型的なのは、胃カメラをする前に行われる鎮痙剤の注射です。
腸管の運動を抑制する為に注射するのですが、
この時かなり強い口渇と瞳孔の散大が殆どすべての人に出現します。

抗コリン作用をもつ薬は、鎮痙剤、風邪薬、安定剤、抗ウツ剤、睡眠剤、一部の胃薬、
頻尿の治療薬、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、抗パーキンソン剤、抗不整脈剤、
一部の呼吸器の薬などで、多くの薬に、抗コリン作用が認められます。
従って何種類かの薬を併用する場合、2ケ所以上の医療機関からの処方を受けている場合などに
予想以上に薬の為の口渇が起こる事があります。
飲んでいる薬は市販の薬を含めて、主治医にきちんと伝えましょう。
口の渇きが気になる方は、主治医にご相談ください。



院長 山本従道からの病気のお話 メニューに戻る